「勝ってチューしたかった」穂積・二宮ペアが全仏準Vで手にしたもの (2ページ目)

  • 神 仁司●文・写真 text & photo by Ko Hitoshi

 実は、"えりまこ"は、ローランギャロスで組む予定ではなかった。二宮はオーストラリア人選手と組む予定だったが、ケガをして出られなくなり、大会の1カ月前に、二宮が穂積に打診したのだった。

 ただ、2人の組み合わせは初めてではなかったので、試合を始めてからすぐに、お互いの意図を汲んで、コンビネーションのよさを発揮した。もともと、二宮の俊敏性を活かした反応のいいボレーを使って、二宮が前衛、しっかりしたストロークを打てる穂積が後衛の時に強さを発揮するペアだったが、ローランギャロスでは、逆のパターンでも、ダウンザラインへのロブを巧みに使いながら、強さを見せた。とくに、二宮はフォアハンドのトップスピンロブのスピードがあるので、相手の陣形を崩す大きな武器になっていた。

 また、穂積は2017年オーストラリアンオープンで、二宮は同年のウインブルドンで、それぞれ準決勝まで進出した経験があったので、決勝進出や優勝でないと満足できないという上昇志向も強く、それもプレーに好影響を与えた。

 ノーシードながら、3回戦で第5シード、準々決勝で第1シード、準決勝で第8シードを立て続けに破って、初の決勝進出を果たす快進撃。シードペアを相手に、Iフォーメーションやオーストラリアンフォーメーション(味方前衛が、サーバーと同じサイドに立つフォーメーション)など、戦術を巧みに使い分けて強敵を倒していった。

 24歳の穂積と二宮によるローランギャロスでの準優勝は、"日本女子ペア"として初めて成し遂げたことを高く評価すべきだろう。日本人にとっては厳しいといわれるレッドクレーで結果を残せたことも大きい。

 初めてグランドスラムの決勝を経験し、負けた悔しさを糧(かて)にして、次のチャンスが巡ってきた時には、グランドスラムで優勝できるはずだという自信を、2人とも手に入れたことが何よりの収穫だ。

「ここまで来られたのが一番うれしいですし、すごくいい経験になったので、絶対次につながると思う。悔しいですけど、下を向くような感じではないです。本当に勝てない相手はいないなと心底思いました。グランドスラムで優勝するチャンスは、また絶対来ると思っています」(穂積)

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