錦織圭の準優勝は、人生2度目の「ケガで前より強くなる」パターンか (3ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

 これは先月のマイアミ・マスターズ時に、錦織が口にしたフォームへの手応えである。今回のモンテカルロではまだ好不調時の差が大きかったものの、準決勝のズベレフ戦では、要所でのサーブの安定感が窮状を切り抜けるカギとなった。

 19歳のときには素直に受け入れがたかった「ケガの功名」が存在することも、今の彼は知っている。特に8年前に実感したのが、右手が使えない間に左手でボールを繰り返し打った成果としての、バックハンドの進化だった。多くの選手を畏怖(いふ)させ、今回のモンテカルロでも幾度もウイナーを奪ったバックハンドの逆クロスやストレートへの強打は、ケガを克服したからこそ手にした武器だ。

 今大会の錦織は、飛び上がりながらバックを放つ"ジャックナイフ"を幾度も披露した。ズベレフ戦ではジャックナイフをフェイントにドロップショットを沈める妙技で、観客の歓声とため息を誘いもした。

 父親が「飛んでいてほしい」と願った30歳を2年後に控えた今、彼は赤土を蹴り上げながら、ふたたび大きく飛翔しようとしている。「苦しみながらも、楽しんでできると思う」と言っていたように、頂点へと駆け上がる道中の景色を楽しみながら――。

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