錦織圭、「ケガの先輩」に完敗して、
むしろ復活へポジティブな手応え

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

 常にデル・ポトロが先行していた両者の足跡が交錯したのは、2014年のこと。錦織がマイアミ・オープンでベスト4入りし、覚醒の兆しを見せたころ、デル・ポトロは左手首にメスを入れる。そのケガからの復帰には約2年を要し、その間、ふたりの対戦もなし。2016年に4年ぶりに対戦したときのランキングは、錦織が5位で、デル・ポトロが42位。この試合で錦織は、デル・ポトロから初勝利を手にした。

 それから1年半後の今大会で、ふたりはふたたび立場を入れ替え対戦する。昨年8月以降、手首のケガで6ヵ月コートを離れた錦織と、2大会連続優勝でマイアミ入りしたデル・ポトロ。錦織にとっては、これが復帰以来13試合目で、ツアーレベルに限れば7試合目だ。

 この一戦で何かを掴みたいという錦織の切望は、試合立ち上がりのプレーに込められていた。第1ゲームではファーストサーブをすべて入れ、1ポイントも与えずキープ。続くゲームでも鋭いフォアを深く打ち込み、相手を走らせウイナーを叩き込む。ブレークのチャンスは逃すものの、第3ゲームもネットプレーを交えて簡単にキープ。試合開始から約15分――勢いは、錦織の側にあった。

 しかしこの第3ゲームで、かすかな不安の予兆が顔を出す。それは、ドロップショットのミス。デル・ポトロをベースライン後方に押しとどめ、前のスペースを使うのは狙いどおり。ただ、その決め球でミスが出た。さらに続くゲームでも、錦織はドロップショットをネットにかけている。

 それに対し、次の錦織のサービスゲームで、デル・ポトロが絶妙なドロップショットを沈めてみせた。強打に緩い球も混ぜ、錦織を揺さぶるデル・ポトロが3度のデュースの末にブレーク。すると堰(せき)を切ったように、試合の趨勢(すうせい)は一気にデル・ポトロの勝利に向けて流れ出した。

2 / 4

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る