錦織が不在でも、大坂なおみがいる。コートを支配して上位シード撃破 (2ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by Getty Images

 第2セットも、大坂は最初のゲームを5度のデュースの末にブレークし、勝利へと大きく前身する。しかし、続くゲームをミスやダブルフォルトを重ねて落とす。さらに次のゲームもブレークするが、直後のゲームをまたしても奪われた。

「あのときは、実はちょっとイライラしちゃって......。あれだけがんばってブレークしたのに、自分のゲームを簡単に落としてしまったから......」

 試合後に大坂は、決まりの悪そうな笑みを浮かべて打ち明ける。ただ、それは「相手にチャンスを与えたら一気に走られてしまう」ことを知り、試合開始直後から高い集中力でプレーし続けてきたことの代償でもあった。

「立ち上がりから飛ばし、そのレベルを維持し続けるのは、私にとって大きな挑戦だった。それが第2セットの序盤で、少しプレーが落ちてしまった理由でもあって......」

 しかし、ここでも彼女は苛立つ自分に、ひとつの考え方を提示する。

「単に並ばれただけで、実際には何も失っていないじゃない。またここからベストを尽くそう」

 すると心が落ち着き、ショットにも安定感が戻る。ゲームカウント3-3からの相手サーブをブレークすると、続く自分のゲームを今度は万全のプレーでキープした。

 圧巻は、このゲームの最初のポイントを奪った場面。バックのクロスの打ち合いから、相手のボールが少し浅くなった機を逃さずに踏み込み、フォアの逆クロスを豪快に叩き込む。ボールの行方を目で追うことしかできない世界5位の姿は、滞留していた試合の流れが堰(せき)を切ったように迸(ほどばし)ったことを示していた。

 止まらぬ大坂は、以降も強打で圧倒し、最後は豪快なフォアのリターンウイナーで試合に鮮やかな終止符を打つ。

「少し落ちた状態から、巻き返せたことを誇りに思う」

 試合後にターニングポイントを振り返る声に、少しばかり熱がこもった。

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