デ杯、東京五輪。テニス日本代表のカギはこの「ダブルス戦士」が握る (4ページ目)

  • 神 仁司●文・写真 text & photo by Ko Hitoshi

「ベンは前から日本のパスポートを持っているし、母親は日本人です。そして、ITFとしては、ベンがニュージーランドのデ杯メンバーになっていないことが判断の決め手になって、ちょうどローランギャロス(6月上旬)の頃にOKが出ました。そのタイミングで、9月のデ杯は出られる可能性があると言われた。あとは日本テニス協会がどうかだけでした」

 嶋田コーチは、マクラクランが感謝の気持ちを伝えてきたことに感銘を受けた。いいコミュニケーションがとれて、これならやっていけると確信した。そして、何より彼にダブルススペシャリストとしてやる覚悟があることが重要だった。

「まず、ダブルスのやる気がある。そこが一番大きいポイントですね。ダブルススペシャリストになりたいという気持ちがベンにはあるので、楽にコミュニケーションをとれます。もっと細かく深くアドバイスしても全然OKで、ダブルスだけの練習をもっと求めてくる。どんな仕事でも中途半端だとうまくいかない。ある程度はいけるかもしれないけど、トップのトップを目指すのなら、スペシャリストにならないと難しいですね」

 さらに、嶋田コーチは、マクラクランのテニスの技術的な魅力も感じている。

「サーブがいいですね。サーブの軌道が全然違います。ちょっと特別。(2017年)ジャパンオープン(初優勝)の頃には、すでに世界のトップレベルぐらいにあったと思う。肩が柔らかくて、ボールも結構跳ねて動く。コースも読みにくい。ボレーも悪くないし、反応もいいし、もっと上達できる。あと、相手のボールから逃げないのがいい」

 こんなエピソードもある。

 マクラクランは、2017年9月のデビスカップ日本代表デビュー前まで、リターンではアドサイド(コートの左半分のサイド)に入っていた。もともと、あまりリターンが得意じゃなかったが、大学の時に、最初のダブルスパートナーがデュースサイドしかやらなかったので、仕方なくやってきたのだという。

 ところが、デビスカップの1週間前に、同じ代表の内山靖崇と組ませて、マクラクランにデュースサイドにトライさせたところ、いい手ごたえをつかんだ。

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