軽いラケット、柔らかいボールから、錦織圭の復活はもう始まっている (2ページ目)

  • 神 仁司●文・写真 text & photo by Ko Hitoshi

 11月中旬より通常のテニスボールでラリーをするようになったが、ラケットは軽いもののままだ。

「だいぶ打てるようにはなってきている。まだ5~6割ぐらいですね」と語る錦織が、今季右手首のケガを初めて発症したのは、3月下旬のマスターズ1000・マイアミ大会準々決勝でのことだった。その後のクレーシーズンでも再発を繰り返して、だましだましのプレーが続いた。プロ10年間で蓄積された疲労も伴い、右手首が悲鳴をあげたと見るべきだろう。

 2017年の年初、錦織は世界ランク5位でスタートしたが、シーズン途中で戦線離脱をしたため、結局、マッチ成績は30勝13敗。2011年以来のツアー優勝ゼロで、ATPランキングは22位でのフィニッシュとなる。2014年から3年連続トップ10でシーズンを終えていたが、残念ながらその記録は途絶えた。

 もともと錦織はケガの痛みに対して敏感で、そのせいで自分のプレーにブレーキをかけてしまう時があった。ケガの多い錦織にとって、それは安全装置のようなものだが、彼の才能を最大限に発揮できない一因でもあった。

 ただ、今の錦織は思いきり打てない原因を冷静に見つめ、状況を把握しようとしている。

「あまり怖さに負けないように、痛さ、メンタルでバリアを作ってしまわないように心がけています」

 このように27歳の錦織が語れるのは、19歳の時に、右ひじの手術をして1年間試合に出られず、ランキングがなくなるという経験をしたからだ。

「2009年の時は無理矢理、自分のなかで(ケガの経験を)プラスにしないといけないという焦りもあったし、プレッシャーもあったりしました。いろいろな人から経験談を聞いても『プラスにしないと』と言われましたけど、ケガをして、離脱しているんだからプラスにできるわけないだろ、と当時は思っていたんです。

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