杉田祐一はコートで笑っていた。全米オープン前に掴んだ勝利の方程式 (3ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by Getty Images

 金星とも言える勝利を手にしたときは、往々にして次の試合が難しいとよく言われる。特に杉田は過去にも、「勝っても負けても淡々と次の試合に備えることが課題」と口にしてきた選手である。その意味でも、ランキングやプレースタイル的にも自身と似たジョアン・ソウザ(ポルトガル)と向かい合った2回戦は、ひとつの試金石でもあった。

 その一戦の重要性を、誰よりも理解していたのは杉田である。特にこの試合での彼は、「動きがフィットしない」もどかしさのなか、試合のなかで修正し、堅牢な守備を足がかりにジリジリと勝機を見出した。最終セットは序盤でブレークし、最後は相手の心を挫(くじ)いた末の逆転勝ち。その戦いをのちに杉田は「大きな勝利」だと振り返った。

 課題を乗り越えた先の3回戦では、「楽しい」戦いが待ってきた。相手はこの1年でランキングを急上昇させているカレン・ハチャノフ(ロシア)。細かい策を弄(ろう)することなく、自慢のフォアで勝つことを自らに課すかのような無垢なプレーで台頭してきた若者だ。

 その21歳と相対する杉田は、コート上で、笑っていた――。

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