杉田祐一はコートで笑っていた。全米オープン前に掴んだ勝利の方程式 (2ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by Getty Images

 あれから1年――。「世界のトップ50プレーヤー」あるいは「ATPツアータイトルホルダー」として思い出の地に戻ってきた杉田は、「バルセロナ(・オープン)もそうですが、毎年いい雰囲気で入れる大会というのはありますね。この大会が、そのうちのひとつだと思います」と、快進撃の予感に声を弾ませていた。

その予感を現実に変え、シンシナティで「最高の8名」に至る道のりで得た、3つの勝利と1つの敗戦。それはいずれも必然の帰結であり、それぞれが異なるテーマを内包しながら、全体としてはひとつの趣(おもむき)深い物語を紡(つむ)ぎ出す。

 まず1回戦で立ちはだかったのは、地元アメリカのナンバー1にして世界16位のジャック・ソック。高速サーブと重いフォアのストロークを得意とする強打が自慢で、戦いの舞台には当然のようにセンターコートが用意された。

 その険しい一戦に、杉田は万全の準備をもって挑んでいた。

「観客が向こうにつくのは間違いないので、自分のプレーに集中し、隙を見つけて自分から攻撃できればと思っていた」の言葉どおり、いずれのセットでも先行されながら、巧みに相手を揺さぶっては綻(ほころ)びを見出した。特に勝利のカギとなったのが、高く跳ねるソックのセカンドサーブを早々に攻略したこと。「早い段階で、跳ねる前に打ち返すいいフィーリングを掴めた」ことで流れを呼び込み、7-5、6-4のスコアで快勝した。

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