ポニーテール姿から14年。フェデラーとウインブルドンの特別な関係 (4ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

 果たしてウインブルドンの決勝戦でも、第1セット終盤で決めたバックのパッシングショットが、あるいは第3セットの勝負どころで叩き込んだリターンが、8度目の栄冠を引き寄せるカギとなる。大会を通じてひとつもセットを落とすことなく、必然とも思える優勝を通算72本目のエースで決めたとき、彼は飛び跳ねるでも泣き崩れるでもなく、ただ力強く、両腕を天に突き上げた。

 7度目の優勝から5年が経ち、昨年はウインブルドンを最後に長い休養を取った窮地から、ふたたび蘇った理由は何か?

 そう問われたフェデラーは、「それは......」と言うと、しばし黙し、そして言葉に力を込めた。

「信念だ。僕は、自分を信じ続けた。去年敗れた後に、戻ってくるまでの道は苦しかった。ノバク(・ジョコビッチ)に2年連続で負けたときもそうだった。それでも僕は、自分を信じ続けた」

 その信念の背景には、自身を疑ったときには背を叩き、舞い上がりそうになったときにはたしなめてくれたチームスタッフや家族の存在があったことも、のちに彼は言及している。

 センターコートへの扉に刻まれるキップリングの詩『IF――』は、次のような一節で始まる。

「もし、不当な非難にさらされても信念を曲げず、己を信じ、なおかつ、疑う者たちを許せるのなら......」

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