ポニーテール姿から14年。フェデラーとウインブルドンの特別な関係 (3ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

 そのような激しく緻密なトレーニングの日々を、休養中の彼は人に見せることはなかった。SNSなどには子どもたちとキャンプを楽しむ姿や、瀟洒(しょうしゃ)なスーツに身を包んだパーティ時の写真などをアップする。そんな表層だけを見た人たちは、「彼はもう、テニスに戻る気はないのでは......」と囁きもしただろう。だが昨年末、そんな雑音を一喝するように彼は言った。

「僕は自分の"戦士"の一面を、人に見せることを好まないんだ」

 自分を信じ、息を潜め、彼は復活の日に備えて牙を磨いた。

 復帰を果たした今シーズンの前半戦で、彼は「現実味のない、夢のよう」な快進撃を見せる。ウインブルドンを迎えた時点で、全豪オープンを含む4大会に優勝し、戦績は24勝2敗。計画的な休養と練習の成果だろう、35歳を迎えてなおフットワークは誰よりも流麗で、「唯一の弱点」と呼ばれたバックハンドは硬軟自在の武器と化していた。ウインブルドンではファーストサーブの確率も大会を通じて67%と高く、ポイント獲得率は82%を記録。かつては「芝での定石」と呼ばれたサーブ&ボレーも多く用い、総獲得ポイントの16%以上をネットプレーが占めた。

 フェデラーの長年の友人にしてライバルでもあるトミー・ハース(ドイツ)は、盟友の進化の最大の理由は「バックハンドにある」と言う。「以前は、ロジャーのセカンドサーブをバックへと打ち込むことが、彼の攻略法だった。だが、今の彼は下がらず、バックでもいろんな球種で攻めてくる」。

3 / 5

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る