大切なポイントを取れない。
錦織圭が抱える「もどかしさ」の種は何か

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

「確かに圭には4回負けているけれど、芝が一番、チャンスがあると思っていた」

 26歳でブレークのときを迎えた、やや遅咲きの29歳は言う。

「僕のテニスは、回転をかけないフラットなショットが主軸。そのショットで、ベースラインからの打ち合いに持ち込もうと思っていた。ディフェンスなら、僕のほうがいいという自信もあった」

 過去全敗の相手に勝つイメージを抱きながら、バウティスタ・アグートはコートに向かっていた。

 もっともそのような相手のプレーは、ある程度は錦織の想定の範疇(はんちゅう)だったはずだ。

「ハレ大会でも見ていたけれど、芝でもすごくうまくプレーしている。バックも安定しているし、ミスが少ない」

 対戦を控えた2回戦後の会見でも、錦織はそう言って相手を警戒した。

 ただひとつ、やや想定外があったとすれば、「展開要素はそれほど多くはない」と思っていた相手が、ドロップショットやネットプレーなどで揺さぶりをかけてきたことだろうか。あるいはフラットで打ち抜く速いフォアでの攻撃は、錦織の想像以上に攻撃的で、攻略が困難だったかもしれない。

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