錦織圭、ウインブルドンで珍しくスピード勝利。次は盟友の仇を討つ!

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

 バックハンドで緩くクロスに打ち込んだボールは、まるで相手の出方や力量を測るための囮(おとり)の一打のようだった。

わずか1時間11分でウインブルドン初戦を制した錦織圭わずか1時間11分でウインブルドン初戦を制した錦織圭「僕自身もコーチも、直接はあまり見たことがない」選手との対戦で、「試行錯誤が必要になると思う」という手探り状態で迎えたウインブルドン初戦――。芝での実戦経験がほとんどなく、今大会も直前までクレーで戦っていた相手の片手バックハンドに放ったその打球は、錦織圭のバックサイドへとやや甘く打ち返される。

 この時点で錦織は何かを悟ったかのように、次の瞬間には容赦なくストレートへと強烈なウイナーを叩き込んだ。その後もラリーで優位に立つ錦織は軽々とポイントを重ね、最後は"エアK"で試合立ち上がりのゲームをブレークする。

 グランドスラムの初戦前夜は常に眠りが浅く、この日も「しっかり寝れない」ほどの緊張感を抱いたまま向かったコート......。だが、試合が始まると「相手のミスも多かったので、すぐに緊張は吹っ飛んだ」と冗談めかして振り返る。早々に相手のプレーを見極め、伸び伸びとコートを走り、腕を振る錦織の勝利は、この時点ですでに決まったかのようですらあった。

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