「自動操縦」が切れた錦織圭。マリーは退屈なドリル練習で蘇っていた (3ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

「正直、今回の全仏前の練習でも、試合形式の練習ではいい状態ではなかったんだ」

 包み隠さず、彼は言う。

「マドリード大会のころは、試合中でも、どのショットを打つべきかわからないことが多々あった。打ち合いの途中で焦ってしまい、誤った判断をしていたんだ」

 では、それほどまでの不調にあえぎ、自信を喪失した彼はいかにして、わずか1~2週間で立て直しに成功したのか? それはテニスの原点とも言える、もっとも基礎的な練習に立ち返ることだった。

「ものすごく基本的なドリル練習を繰り返したんだ。さまざまなパターン練習を、文字どおり何度も繰り返した。正直、退屈な練習だ。楽しいとは言えないよ」

 だが、単調で退屈な練習を幾度も繰り返すなかで、彼には身体を通して獲得した、ひとつの確信があった。

「試合で長いラリーになると、まるで自動操縦のように身体が自然と反応し、正しいコースにボールを打てるようになったんだ。コート上で考えることが少なくなる。すると、物事はいい方向へと向かっていく。物事がうまくいかないときは、コート上で技術面などあれこれ考え過ぎてしまうものだからね」

 それが、世界1位のマリーが全仏直前に至った境地だった。

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