ピンチを救ったチョン戦「恵みの雨」。錦織圭は半日で何を変えたのか (3ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

「最終的に5セット戦えたのだから、僕にとっても問題なかった。あのまま昨日試合を続けていたら、もしかしたら自分に有利だったのかもしれないが......それはわからない」

 チョン・ヒョンは雨を嘆きはしなかったが、約半日の時間は錦織を我に返らせるには十分だった。すでにふたつのブレークを許していた第4セットは半ば捨て、彼はファイナルセットに勝負をかける。

「今日はリターンで集中し、まずは1本返して......というのを決めていた」

 その決意を示すようにサーブを深く打ち返すと、先んじてボールを動かし、外堀を埋めて相手の選択肢を狭めるように、じりじりとラリー戦を支配する。第3ゲームを会心のリターンウイナーで、まずはブレーク。その後ブレークバックを許すも、直後のゲームでふたたび鋭いリターンを起点に主導権を掌握した。

 15-15の場面では、激しい打ち合いのなかから山なりの深いボールを打ち込み、相手を押し下げると同時にポジションを上げて、フォアのウイナーを叩き込む。このとき、コートサイドで試合を見ていた加藤未唯(今大会に単複で出場)が思わず、「うまっ!」と感嘆の声を漏らした。

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