不屈の46歳、伊達公子。新作ラケットに込めた再チャレンジへの決意 (3ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by Nikkan sports/AFLO

 そのラケットを伊達仕様に調整した試作品が完成し、伊達本人が最初に試し打ちをしたのは昨年の12月末。しかしそのときのラケットは、伊達が求める感触とは何かが異なっていたという。

 トップ選手は誰しも自分の身体の一部といえる用具に対して、職人的なまでのこだわりを持つ。わけても伊達は、他者にはわかりえないだろう繊細な差異にも、一切の妥協を許さぬことで有名だ。

 特にラケットの重量は顕著であり、多くの男子選手たちより重いほどである。

 ラケットの重量を活かすことでパワーを補い、コンパクトなスイングで跳ねた直後のボールを叩く......。それが、伊達のみが扱える伝家の宝刀「超ライジングショット」の精髄だ。

 またグリップも、他の選手よりも太めを好む。一般的にはグリップが太いと制御が困難になるため、小柄な女子選手は細めを使うのが主流だ。だが伊達には、長年の付き合いにより身体に染みついた、グリップに求める固有の感覚がある。慣れ親しんだ力の入り具合に、人差し指のかかる位置――それらすべてが揃ってはじめて、ラケットは彼女の身体の一部となる。

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