不屈の46歳、伊達公子。新作ラケットに込めた再チャレンジへの決意 (2ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by Nikkan sports/AFLO

「可能性を感じられた、大きな一歩だった」

 そう言い切る伊達の明るい表情は、あたかも彼女が再起の未来を確信して、この1年を過ごしてきたかのような印象すら与える。しかし現実は、術後も痛みが消えぬひざへの不安と葛藤を抱え、復帰への道を模索する日々だったと彼女は明かす。4月12日、復帰への足がかりとして日比野菜緒とエキジビションを戦うが、その後、ひざは腫れて2度も水を抜いた。

「岐阜に入るまでは、大会に出るのは無理かなと思ったときもあった」

 その葛藤の背景には、「出るからには最低でも2~3試合......本来なら(決勝までの)5試合戦える体力的な手応えや、ひざへの自信も持っているべき」だという真摯な勝負哲学がある。それでも最終的には、支えてくれたフィジオやトレーナーたちの「たとえ1試合になったとしても、実戦で戦うことでしか得られないものがある。その意味を優先していこう」の声に納得し、復帰のときをこの日と定めた。

 伊達が抱くコートへの渇望と完璧主義者的な配意は、手にするラケットにも表れる。

 ボールを打つ練習を始めた昨年の晩夏、伊達とラケットメーカーのヨネックスの間で、復帰後に使う新たなラケットについて話し合われた。実戦から離れている間に、筋力は落ちてしまうだろう。そのパワーを補うべく、今までよりもスイートスポットが広く、反発力も高いラケットが新たな武器の候補に選ばれた。

2 / 4

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る