不屈の46歳、伊達公子。
新作ラケットに込めた再チャレンジへの決意

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by Nikkan sports/AFLO

 客席を埋め尽くすファンがその登場を今や遅しと待ち構えるなか、万雷の拍手に手を振り応じながら、彼女はセンターコートに姿を現した。

1年3ヵ月ぶりにコートに戻ってきた伊達公子1年3ヵ月ぶりにコートに戻ってきた伊達公子 いくぶん白くなった肌が過ぎた月日を物語るが、コート上での精悍な表情と、獲物を射るような鋭い眼光には少しのかげりもない。なにより、時に肉を切らせて骨を断ちにいくかのような勝負師の本能が、見る者を否応なく惹きつける。

 公式戦から離れてから1年3ヵ月。軟骨骨移植と半月板縫合のため左ひざにメスを入れてからは、約1年――。伊達公子が、ふたたび戦いの場に帰ってきた。

「やっと、スタートラインに立てたかな......と」

 試合後の会見で、開口一番、彼女は率直な思いを口にした。

 試合そのものは、結果だけ見れば世界136位の朱琳(中国)に2-6、2-6の敗戦。それでも、立ち上がりの相手ゲームをブレークした際に決めた鮮やかなボレーや、第5ゲームを5度のデュースの末にブレークした勝負強さ、そして最後に決めた強烈なリターンウイナーなど、伊達を世界の伊達たらしめたプレーで幾度も歓声を呼び起こした。

「自分でゲームを作ることができた。試合には負けたけれど、勝負は十分にできると感じた」という言葉は、実戦のなかでしか得られぬ手応えの表れだろう。

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