バルセロナOPで快進撃。杉田祐一は錦織圭も認める「スキのない男」 (4ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIA

「彼が僕を変えてくれました。そうでなければ、あのままズルズルといっていたかもしれない」

 そう真っ直ぐ口にすると、彼は少し表情を和らげ、「僕から本人に礼を言うのはなんですが、こういう形で伝われば......」と、独り言のように続ける。ふと漏らしたこのひと言に、杉田というアスリートの美学が凝縮されているようだった。

 目指すべき地点をクリアに視野に捉えた杉田は、ここ2~3年は予選からでも果敢にATPツアーのハイレベルな大会に挑んできた。

「僕も"ATPツアーの一員"なので」

 昨年末、杉田は自分に言い聞かせるように、矜持を込めてそう言った。初出場のウインブルドンで感じた「相手に警戒されることの重要性」を道標に、より高いレベルに身を置くことを課した彼は、昨年はリオ五輪に出場し、シンシナティ・マスターズでも予選を突破して本戦3回戦まで勝ち進む。

 そんな杉田の能力を、誰よりも客観的かつ高く評価しているのは、恐らくは錦織圭だろう。

「100位前後にいる選手では、杉田君のテニスが一番しっかりしている。スキが少ないので、正直、彼は50位くらいにいてもおかしくない」

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