錦織圭の「満身創痍」問題を考える。
キャリア10年目の身体が悲鳴?

  • 神 仁司●文・写真 text & photo by Ko Hitoshi


「そこまで大事ではなかったので、試合をやってみて判断をする形にしました。そんなに悪化しなかったので最後までやりました。なかなかサーブとフォアをそこまで打つことができず、この相手に勝つのは難しかったですね」

 フォニーニも右ひじを痛めていたため、直前練習をキャンセルしていた。準々決勝では、ともに100%のコンディションでのプレーではなく、お互い際どい球は深追いしなかった。

 特に右手首に痛みを感じていた錦織は、サーブとフォアハンドストロークではほとんどのショットでプロネーション(手首の内転ひねり動作)を使わずに、ラケット面をボールに当てるだけで打った。また、ドロップショットやサーブ&ボレーを多用して、ショートポイントで切り抜けようともした。時折力を入れて打ったが、痛みに顔をしかめる場面もあった。

 錦織が右手首に痛みを覚えたのはフェデリコ・デルボニスとの4回戦だったという。振り返れば、4回戦のファイナルセット第1ゲームで、錦織がダブルフォールトを4回もしていたが、あの時すでに右手首の痛みが発生していたと見るべきなのだろう。錦織本人にも原因がわからず、準々決勝当日になっても痛みは引かなかった。

 準々決勝での錦織のミスは22本だったが、振り返ればデルボニスとの4回戦では33本のミス、フェルナンド・ベルダスコとの3回戦では48本のミス、とにかく今大会では錦織らしくないミスの多さが際立った。

 約3年前からトップ10に定着し、最高4位まで上がった錦織はイージーミスの少ないことが彼の強さのひとつだった。しかし、マイアミではミスによってプレーにアップダウンが生じ、最終的にはフィジカル問題によって、錦織の才能あるテニスは影を潜めてしまった。

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