ジャイアントキリング連発!170cmの西岡良仁が「ダビデ」になった日 (2ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by Getty Images

「長いラリーなら、こっちからやってやるよ!」と覚悟を決めてコートに立った西岡は、ふたたび中ロブを多用する相手のボールにどこまでも食らいつき、最後はイーマーの心をへし折る。6-4、6-1のスコアには不釣り合いな1時間47分の長い試合時間に、西岡の真骨頂が映されていた。

 2回戦は41cmの身長差対決にどよめきが起こるスタジアムのなか、小柄なファイターはひとり冷静に戦前の策を遂行し続けた。面した7本のブレークポイントの危機をすべてしのぎ、手にした4本のブレークのチャンスを3度までもモノにする。第19シードのカロビッチを6-4、6-3で打ち倒した勝利は、その日が誕生日だった父親への最高のプレゼントでもあった。

 3回戦での西岡は、世界14位のトマーシュ・ベルディヒ(チェコ)に第1セットをわずか30分で奪われ、第2セットもゲームカウント2-5と敗北まであと1ゲームに追い詰められた場面から、驚異の大逆転劇を演じてみせた。

 敗色濃厚になってもなお、西岡は「相手がナーバスになっていること」、そして「長い打ち合いを嫌がっていること」を見抜いたという。この4週間、大柄な選手相手に14試合を戦い抜いた身体が満身創痍であることは、本人の「いろんなところに痛みが出てきた」の言葉を聞くまでもなく、想像にかたくない。その彼が自分の武器を信じ続け、コート上で何度も屈伸を繰り返しながらも、自ら長い打ち合いを挑んだのだ。

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