マイケル・チャンに怒られた錦織圭は全豪OPで「オトナ」になれるか (3ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

 錦織にとってハースは、IMGアカデミーの大先輩であり、もっとも尊敬する選手のひとりであり、少年時代に練習相手を務めた最初のトッププレーヤーである。

 とりわけ錦織の印象に残っているのが、初めてボールを打ち合った少年の日、したたかに怒鳴られた記憶だ。

 当時14〜15歳だった錦織は、当然ながらハースと練習することに緊張していた。ミスをしてはいけない、ちゃんとラリーを続けなくてはいけない......そんな思いでボールを打ち返していた。

 するとハースは、怒気にゆがんだ顔で叫ぶ。

「俺相手にボールを強く打つのが、そんなに怖いか! 今のこのアカデミーでは、若い選手にボールを打つなと教えているのか!」

 その怒りが自分に向いていることを知り、錦織は「わ〜やべ! こんなふうに遠慮してちゃダメなんだ! もう相手がハースでもいいや、自分を出していこう」と吹っ切れる。それはまだ子どもだった錦織にとって、オトナの世界へのひとつの開示だった。

 そのときから10年以上の年月を経た今も、ハースとの練習は「すごく気持ちがいい」のだと錦織は言う。

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