マイケル・チャンに怒られた錦織圭は全豪OPで「オトナ」になれるか (2ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

 この展開が、チャン・コーチらを憤(いきどお)らせる。

 トップ選手が若い相手に4−0とリードしたら、必ずとどめを刺さねばならない。強者のテニスで完膚無きまでにねじ伏せ、「この人には敵わない」と思わせなければならない――。

 それが、試合後にコーチ陣によって叩き込まれた「勝者の哲学」だったという。果たしてその檄(げき)が効いたか、続く3回戦で錦織は地元オーストラリアの22歳のジョーダン・トンプソンを6−1、6−1のスコアで圧倒した。連戦を勝ち上がっていくためにも、そして今後のテニス界での優位な関係性を確立していくためにも、これこそが錦織に求められる勝利であった。

 また錦織といえば、歴代最高の76.9%を誇る「ファイナルセットの勝率」が取り沙汰されることも多いが、この数字が隠し持つ負の側面は、ストレートで勝つべき相手にもセットを失っているという現実だ。だからこそ「チーム錦織」では、そのことを理解し、相手を圧倒する試合を増やしていくことの重要性について、多く話し合われているという。

 そのような背景を思うとき、全豪オープン開幕3日前の練習相手がトミー・ハース(ドイツ)だったことも、どこか象徴的に映ってくる。現在38歳・最高位2位のハースは、肩や足など幾度も手術を重ねては、そのたびにコートに復帰し、結果も残す不屈の人だ。直近の手術は昨年の4月。年齢や状況から見て誰もが引退かと思ったが、彼はリハビリとトレーニングを重ね、この全豪オープンで約1年半ぶりに公式戦のコートに戻ってきた。

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