2夜連続の失速。なぜ錦織圭は
後味の悪いシーズン終幕となったか

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

「今大会最高のパフォーマンスが、一番欲しいタイミングで訪れた。今日の試合では、あらゆることが噛み合った」

 スコアは6−1、6−1。試合時間わずか1時間6分で錦織圭から勝利を手にしたノバク・ジョコビッチ(セルビア)は、満足そうな笑みを浮かべ自画自賛の言葉を並べると、対戦相手をいたわるかのように、こう続けた。

「対して圭は、明らかにベストのプレーにはほど遠かった。圭は昨晩の遅くまで試合をしていたし、今季は彼にとって非常に長いシーズンであり、長い今大会であった。だからおそらく、疲れていたのだと思う」

主導権を握ったジョコビッチの前に錦織圭は攻め手を失い完敗主導権を握ったジョコビッチの前に錦織圭は攻め手を失い完敗 だが当の錦織は、ジョコビッチの言う「疲れ」を認めつつも、そこに敗戦の理由を求めはしなかった。

「今日は、身体の反応が今ひとつよくなかったのもあり......そんなに疲れは残っていないと思っていたけれど、多少なりとは作用したかなとは思いますが。でも、今日は彼が強すぎました」

 試合終了から、約1時間――。表情と声色に落胆の色を濃く落としながらも、錦織は頭と胸のうちを整理し、思考を組み立てるようにしながら、聞かれる問いに答えていった。

 錦織が言うように、アンディ・マリー(イギリス)に奪われた1位奪還に燃えるジョコビッチが、「強すぎた」のは間違いない。だが同時にジョコビッチの言うとおり、錦織のパフォーマンスが「ベストにほど遠かった」のも、また事実だ。

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