勝ったマリーが敗者のような言葉。
錦織圭は手応えをつかんで前を向く

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

 3時間20分の試合時間は、3セットマッチとしては1991年に時間計測が始まって以降、大会史上最長記録であった――。

大会史上最長となる3時間20分の死闘を演じた錦織圭とアンディ・マリー大会史上最長となる3時間20分の死闘を演じた錦織圭とアンディ・マリー 男子テニスの今シーズン最後を飾る、ATPツアーファイナルズのグループリーグ第2戦。3時間20分のなかに、数々の息詰まる攻防と感情の揺らぎを含んだアンディ・マリー(イギリス)と錦織圭の一戦は、6-7、6-4、6-4のスコアで、マリーがからくも勝利をすくい取った。

「正直、今日の試合ではほとんどの打ち合いを、圭が支配していた」
「彼にほぼすべてのポイントを支配され、思うようにボールを打つことがほとんどできなかった」

 試合後のマリーの口からは、まるで敗者であるかのような言葉が並ぶ。試合終了後、2時間30分という異例の長時間を空けて始まった記者会見。アイス・バスに浸かり、可能なかぎり疲労を残さないよう努めていたという世界1位は、「今日の試合は、圭が2セットで勝っていてもおかしくない試合だった」と、いつもの無表情を崩さずに明言した。

 2セットで勝つべきだった......その想いはおそらく、錦織本人が何より覚えた悔いだろう。マリーが感じていたように、この日の試合は立ち上がりから、一旦打ち合いに持ち込めば、その結末は常に錦織の手にゆだねられた。

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