大坂なおみ、弱点克服で「超高速サーブ」がズバズバ決まった (3ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

 そう語る大坂の顔に、安堵とも感傷ともつかぬ感情がジリジリと広がっていく。彼女の言う「悪夢」とは、今月上旬のニューヨークのセンターコートで喫したばかりの、大逆転負けの記憶。全米オープンの3回戦、世界9位のマディソン・キーズ(アメリカ)を第3セットの5-1まで追い詰めながら、大坂はそこから猛追を許し、最後は「精神的に崩壊した」と認めるほどに大きな心の傷を負ったのだ。

 その「悪夢」から3週間後の、有明コロシアム――。世界12位相手に同じスコアになったとき、彼女の胸裏を「あのとき」の息苦しさがよぎる。すると、サーブのトスが低くなり、バックハンドが振りきれなくなった。

 瞬く間にスコアは、0-40に......。3週間前の記憶に引きずり込まれた彼女は、「あのときと一緒だ。このゲームは取られる」と覚悟したという。

 このとき、ニューヨークの悪夢に絡め取られていく彼女を、「ホーム」の有明コロシアムに引き戻したのは、スタンドを埋める観客から飛び交った「なおみちゃん、がんばれ!」の声援だったろうか。突如、我に返ったかのように、彼女は過去もスコアをも忘れ去り、「目の前のポイントだけに集中し、できることは何でもやってやろう」と思ったのだという。

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