激闘の錦織圭が、グランドスラム制覇に「あと少しだけ足りないもの」 (4ページ目)

  • 神 仁司●文・写真 text & photo by Ko Hitoshi


 錦織は冗談を交えながらそう話すように、ギリギリの戦いであったことは認識している。まもなく27歳という年齢を踏まえると、トレーニングをして今から劇的な体力向上を望むのはあまり現実的ではない。そうなると錦織にとっては、グランドスラム2週間におよぶ5セットマッチが続く中で、どう勝っていくかが重要になってくる。すなわち、グランドスラム第1週目での試合をなるべくストレートで勝ち、しかも短時間で勝ち上がる必要がある。ジョコビッチやマリーと戦う時までに、少しでも力を温存しておきたいところだ。

 理想としては錦織がマリーやジョコビッチにストレートで勝てればいいが、それにはもう少し時間の経過が必要だ。マリーらの強さも永遠ではない。もちろん錦織も、最低限今の強さを保たなければならないし、グランドスラム優勝となれば、多少の運も必要だろう。

 錦織はUSオープンベスト4によって、ランキングポイント720点が加算されるため、大会後にランキングが7位から5位に上がり、昨年8月31日以来のトップ5に返り咲く。2017年のオーストラリアン(全豪)オープンでの優勝争いを見据えると、錦織は今シーズン中にランキングを4位に上げておきたいところだ。そして、シーズン成績上位8人しか出られないATPワールドツアーファイナルズの出場権をめぐるRace to Londonでは、錦織は4位につけており、3年連続出場に向けて視界良好だ。

「グランドスラム決勝に戻ってこれるチャンスは、またいつか出てくると思います」

 ニューヨークでつけた自信を携え、そして新たに見つけた課題を克服できれば、錦織はまだまだ強くなれる。彼が見据える目線の先にあるものは、あくまでもグランドスラムの頂点だ。

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