錦織圭が残したリオ五輪の余波。日本人選手、それぞれの成長物語 (5ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

 だからこそ今季の彼は、6月以降はツアー大会のみに参戦。その間に幾度もトップ100選手を破った彼は、シンシナティでは27位のアレクサンダー・ズベレフ(ドイツ)を筆頭に、3人のトップ50選手から勝ち星を連ね、最後は6位のミロシュ・ラオニッチ(カナダ)とフルセットの熱戦を演じてみせた。大会終了後、強さの指標であるランキングは83位まで上昇。これはプロ10年のキャリアのなかで、自己最高の成績である。

「過去最高の成績なので、すごく嬉しいのは間違いない」

 ラオニッチ戦後、杉田は表情を変えずに言った。

「ですが、ここからがすごく大切になる。ここで経験したことを、次にうまくつなげたいと思います」

 その"次"につなげ、来季はツアーに完全定着すべく、杉田は現状に満足することも、浮かれることもなく、ここから先の戦いに目を向けた。

 リオ五輪で96年ぶりに日本テニスにメダルをもたらした錦織の出現は衝撃的であったが、しかし彼は、日本テニス界の枠組みの外で開花した大輪でもあった。

 それでも、錦織圭というインパクトは日本人選手の間に、確実に巨大な余波を広げていく。錦織が抱く意識や積み重ねた経験は、今回のリオ五輪を媒介として同じ舞台に立った者に、さらには立てなかった者たちにも伝播しながら、すべての選手を新たな地平へと押し上げている――。

■テニス記事一覧>>

5 / 5

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る