4戦全敗のライバル復活も歓迎。錦織圭は「打倒トップ2」で全米に挑む (2ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by Getty Images

 4週間の戦いで得た9つの勝利と、喫した3つの敗北――。

 それら濃密なる結果は、錦織にさらなる高みへ行くための足がかりと、より上に行く過程でぶち当たる障壁の輪郭を、改めて明瞭に浮かび上がらせた。

 かけがえのない収穫は、約2年ぶりに手にした「トップ5からの勝利」である。トロントの準決勝では、当時5位のスタン・ワウリンカ(スイス/現在3位)を7-6、6-1で撃破。第1セットでは逆転で奪う勝負強さ、そして、第2セットでは相手の落胆を見逃さずに突き放す爆発力の双方を見せつけての快勝であった。

 さらにリオ五輪では、銅メダルをかけた3位決定戦で世界5位のラファエル・ナダル(スペイン)を破る。勝利を目前にしながら追いつかれるも、その苦境から立て直して掴んだ勝利。それは本人をして、「気持ちをすごい奮い立たせて、最後はがんばった」と評する、強靭な心身の証明でもあった。

 だが同時に、トロント・マスターズ決勝でノバク・ジョコビッチ(セルビア)に、オリンピック準決勝ではアンディ・マリー(イギリス)に屈した事実が、錦織の心に悔いと頂点への距離感を植えつけ、マスターズ準優勝や五輪銅メダルの快挙を素直に喜ばせなかった。

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