「成長を測る存在」ナダルを撃破。錦織圭の銅メダルは強さの証 (2ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by JMPA

 もっとも、実際には錦織こそが、他の多くのアスリートたちが会いたがっていた選手だろう。今回は開会式の参加を見送った錦織だが、会場に向かう日本選手団の"見送り"には行った。すると、たちまち選手たちに囲まれて、「一緒に写真を撮ってほしい」と求められたという。戦い慣れたツアーとは異なる熱気と景色に包まれて、リオでの錦織はメダルを追っていたのだろう。

 そんな錦織が、負ければ手ぶらで去ることになる3位決定戦で戦った相手が、ラファエル・ナダル(スペイン)だというのも、どこか運命的な巡り合わせだ。

 ナダルとは錦織にとって、自身の成長を測る物差しのような存在である。

 初めて両者がボールを打ち合ったのは、錦織がまだ16歳のとき。当時すでに、若き"赤土の王"としてクレーコートを支配していたナダルが、全仏オープン決勝前日の練習相手に選んだのが、錦織だったのだ。この練習後、ナダルの伯父でコーチでもあるトニーは錦織のコーチに、「彼は将来、トップ10になる」と告げたという。対する錦織は、「打つだけでラケットが弾かれそうになる。全然相手にならない」と、世界の頂点との距離を悟った。

 公式戦での初対戦は、その2年後に実現する。当時18歳のツアー新参者は、敗れはしたが、ナダル相手にフルセットの熱戦を演じてみせた。

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