元世界4位のクルム伊達公子だからわかる「錦織君は今が苦しい時期」 (4ページ目)

  • 長田渚左●文 text by Osada Nagisa  photo by TISCH(takahashi office)  小菅孝●ヘア&メイク hair&make-up by Kosuge Takashi  西尾妹子●スタイリング styling by Nishio Maiko

――それは20代で一度離れたテニスへの吸引力にもなりましたか?

「"テニスに戻りたい"はなかったのですが、素直にテニスが好きと 言えるし、思えるようになったことは確かです。振り返れば、あんなにもテニスが好きだったわけだし、世界ランキング4位、グランドスラムのセミファイナリ ストだった......やっぱりテニスは素晴らしいスポーツだと改めて感じるようになりましたね」

――正直、私は伊達さんの第一キャリアピリオドの打ち方を見ていて、必ずこの人はもう一度プレーヤーとして戻ってくるだろうとは思っていました。ただ、11年半もかかるとは思いませんでした。

「私はまさか"戻る"とは思っていませんでした(笑)。当然、悩まない人生ではないですが、やらない後悔よりやった後悔のほうがいいと思うんです。何でやらなかったのか?と思うのはやっぱり嫌で、トライして後悔したら、また、そこで考えればよいわけですよね。

 この年齢になってくると、常識なんかに囚われなくてもいいと、どんどん思えるようになってきました。第一キャリアでテニスをやっていたときも、自分にさえ嘘をつかなければいいと思っていました。他人はだませても、自分はだませないですからね」

――自分をだませないと思われたうえで、37歳でプレーヤーとしてのカムバックだと思いますが、「今もって誰も追い越せないキャリアが燦然と輝いているのに、何を今さら!?」というようなご主人(レーシング・ドライバーのミハエル・クルム)じゃなくて良かったですね。

「そ うですね。結婚して一緒にいるからといって、『僕のために人生を過ごしてほしくない』という人です。『テニスでも仕事でもやれる立場にいるなら、やったら いいじゃないか』と言います。やっぱりテニスをしたい、と37歳で思うようになったときには『失うものは何もないじゃないか(Nothing to Lose)』と背中を押してくれましたし」

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