元世界4位のクルム伊達公子だからわかる「錦織君は今が苦しい時期」 (3ページ目)

  • 長田渚左●文 text by Osada Nagisa  photo by TISCH(takahashi office)  小菅孝●ヘア&メイク hair&make-up by Kosuge Takashi  西尾妹子●スタイリング styling by Nishio Maiko

――雨での中断の後、6ゲーム連取されて8強を逃しました。錦識は世界の6位、ガスケは12位でしたが......。

「私だったら本当につら くて、立ち直れなくなるんじゃないかと思いましたけど、ああいう最悪な結果でもトータルに考えれば、ひとつの負けなのだと思えるか、です。だから、ダバ ディさんの言うように。他のジャンルの人との出会いなどで、心に余裕を持ち、どのくらい視野を広げられるかは大事です。

 ただ、実際は毎週、毎週ツアーですから、会う人も限られてくるだろうし、別の発想や違う興味を持つ人と出会う時間があるのだろうかというのは、疑問ではあります。

 でも、彼ももう(今年の末には)27歳ですから、もうそろそろ少し大人びてくるでしょう(笑)」

――伊達さんは26歳で引退。11年半後、37歳でもう一度テニス界に戻ってくる中でJICA(独立行政法人国際協力機構)のオフィシャルサポーターとして、発展途上国でのテニス指導などをしました。その経緯について教えてください。

「それまでテニスの試合で行くのは先進国しかなかったのです。途上国は私にとって未知でした。当然だと思う人もいるかもしれませんが、見るのと聞くのとでは大違いなことばかりでした。

  中国、タイ、ベトナム、バングラデシュ、マラウイ、ジャマイカ、ホンジュラス、モロッコ......言葉も社会的環境、文化も異なる国々でテニスを介してコミュニ ケーションをとりました。その中には、テニスをしたくてもできないばかりか、『今日は楽しかったけど、自分はもう一生テニスのラケットを触ることはない』 という呟きを耳にすることもありました。

 地球上でテニスひとつをとっても、こんなに差があるのかと実感しました。インパクトは強かったです。自分の中でのテニスというものを見つめ直すきっかけにもなりました」

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