「勝てていたかも」。20年前、伊達公子は女王グラフを追い詰めた (2ページ目)

  • 長田渚左●文 text by Osada Nagisa photo by TISCH(takahashi office) 小菅孝●ヘア&メイク hair&make-up by Kosuge Takashi 西尾妹子●スタイリング styling by Nishio Maiko

――第1セットはグラフが6-2で先制、第2セットは伊達さんが6-2と取り返したとき、試合は翌日に持ち越されることが告げられました。

「第1セットは、あっという間にグラフに取られてしまったという印象でしたが、第2セット、自分がリードしたあたりから、グラフがあせっているのがわかりました」

――それはどういう点からですか?

「彼女はふだんから動きは早いのですが、あせってくると、さらに動きが早くなっていくんです。勝負を急ぎ出していました。

 そして、彼女はなんとか(流れを)止めたい。そのうちのひとつの選択肢として、日没を理由にして主審に『何時まで試合をするのか?』とアピールしたのだと思います。私が第2セット第8ゲームを取って、1セットオールとなったところでした」

――ずっと気になっていたのですが、その夜は眠れましたか?

「特に寝られなかった印象はないですね。試合は終わらなかったので、記者会見はなかったですし、当然シャワーを浴びて、食事、マッサージを受けて、何とか睡眠を確保しようとしましたね。

 翌日の試合開始は11時でしたけど、直前まで寝ているわけにはいかないし、練習して試合に備えましたけど......6―3でグラフ、やっぱりダメでした。前日あのまま私のペースで試合が続行していたら......という思いがないわけではなかったですけど。

 あの時代には衛星放送も今のように充実してなかったせいもありますが、NHKの総合テレビが夜7時のニュースを飛ばして、テレビで生中継をやってくれたことは、今思うと信じがたいですね。それだけのニュースだったんだと......」

2 / 5

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る