マイケル・チャンは言う。「錦織圭の夏は全米オープンが最優先だ」 (5ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

 今の錦織には、チャンの経験や戦術眼に加え、確たる知識と技術を持つ、フィジカル面のスペシャリストたちがついている。錦織自身もグランドスラムの決勝戦やツアー優勝を経験し、その時々に必要なこともわかっている。

 しかしそんな彼らにとっても、オリンピックが控える今年の夏は、4年に一度の希少なケースだ。長く厳しい夏を乗り越えるために、もっとも重要なこととは何だろうか?

「まずは、ケガを治すことが最優先です」

 チャンが即答する。

「カナダ・オープン、リオ・オリンピック、シンシナティ・マスターズと大きな大会が続き、そして1週間あけてUSオープン。これは、とてもタフなスケジュールです。実際、オリンピックの年は常に厳しいんですよ。だからこそ、ケガには何より気をつけなくてはいけません。

 圭はハードコートをもっとも得意としているので、チャンスは当然、大きくなる。ニューヨーク(全米オープン会場)によい状態で入ることを、最優先に考えなくてはいけません」

 ウインブルドン4回戦での途中棄権――。それは残念な結末ではあるが、試合後の錦織の顔には、持てる力を「出し尽くした」がゆえの達成感も浮かんでいた。

 かくして長い欧州シリーズは終わり、昨年苦しい時期を過ごした夏が、より厳しさを増してやってくる。昨年の経験を踏まえたうえで、錦織たちは、どう後半戦を戦い抜くのか――。「チーム圭」の成熟度が、厳しく問われる季節でもある。

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