泣かなくなった土居美咲。初のベスト8をかけて因縁のケルバー戦へ (4ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki  photo by AFLO

「あのゲームがカギだった。食らいついてタイブレークに持ちこんだことで、相手のほうが焦りが出た」

 さらにこの日は、断続的に降る雨のため、土居が流れを掴んだタイミングで、試合は2度までも短い中断を挟む。

「ずっと気持ちをキープしていたので、試合が終わった後はメンタルが、『あ~、終わった~』という感じでした」

 安堵の声に、誇らしげな響きを乗せて土居は笑った。

 初めて達した、グランドスラムのベスト16――。しかし勝利の瞬間も、土居は「まだ試合は続くので」と、嬉しさや満足感をさほど見せることはなかった。

 そんな土居が「ベスト8」をかけて相対するのが、今季の全豪オープン優勝者のアンジェリック・ケルバー(ドイツ)というのも、よくできたシナリオだ。何しろケルバーは、土居が全豪の1回戦で対戦し、マッチポイントまで追い詰めていた相手。敗戦後に帰国し、決勝戦の模様をテレビで見ていた土居は、ケルバーが優勝スピーチで、「私は初戦でマッチポイントまで追い詰められ、帰国の飛行機に片足が乗っていた」と語るさまを見ながら、胸が熱い感情で満たされるのを感じていた。

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