泣かなくなった土居美咲。初のベスト8をかけて因縁のケルバー戦へ (2ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki  photo by AFLO

「プレーにムラがある」「メンタルが弱い」

 いつからか土居には、そのようなレッテルが貼られるようになっていた。

 だからこそ彼女は、"自分を信じる力"を渇望するようになる。

「今でもそうですが、テニスの試合のなかでは、自信が大きな部分を占めていると思っている。負けが込むと自信はなくなるので......たぶんそのときは、一番そこが欲しかったのかな?」

 安宮の門を叩いた2年前の自分を懐かしむかのように、今の土居は、そう言った。

 メンタルを鍛える――。言葉にするのは簡単だが、その実態は難しい。何しろ「精神」という、目に見えないものを相手にするのだ。一朝一夕に成果が出るわけでもない。

 しかしその本質は、「反復練習による強化」だと、安宮も土居も口をそろえる。

 集中力を高め、ポジティブな精神状態へと気持ちをスムーズに移行させる――。そのために時には、パネルやカードなども用いながら、心をコントロールする術を繰り返し練習した。試合や特定のプレーのイメージトレーニングも、効果的なパフォーマンス向上の鍛錬だ。

 また、特定の所作と精神状態をリンクさせる「アンカリング」と呼ばれる手法も、土居が取り組んできたものである。これは、特定の肉体的な動きを、望む精神状態に入るための"スイッチ"にする試みだ。

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