錦織圭の勝機は「スライス」にあり。初のベスト8をかけチリッチ戦へ (4ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki  photo by AFLO

「僕の芝でのプレーの感触は、とてもいい。サーブが効果的だという点でも、僕のプレースタイルに向いていると思う。でも、圭のように速い展開が好きな選手にも、芝は向いているはずだ。だから、どちらの選手にとっても有利に働くんじゃないかな」

 自身のサーブに自信を深めつつも、「圭は速い展開が好きだ」と見るチリッチの警戒心――。おそらくはそこにこそ、ボッティーニコーチが「チリッチにもスライスは有効」と睨む理由がある。

 たしかに、ボールを早いタイミングでとらえる展開力が、錦織の武器ではあることは間違いない。ただ、ここにスライスのアクセントを加えることで、相手の読みに揺さぶりをかけることが可能だからだ。

 もちろん、錦織本人が「自分の身体に、いかにムチ打って戦うか」だと感じるほどの脇腹の痛みは、疑いの余地ない不安材料だ。どこまで「ムチ打つ」ことが可能なのか......。それは、本人と周囲のスタッフたちにしかわからない部分でもある。

 ただ、「自分の身体と戦うことに神経を使っているので、そこまで勝ちに欲が出てこない」という無欲さ、そして、多少の妥協も受け入れる気持ちが、ここまでいい方向に働いている部分があるのも、またたしかだ。

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