相手が打つよりも先に動く。錦織圭の頭脳的な「サーブ誘導術」 (2ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki  photo by AFLO

 グロスのサーブは、両サイドには打ち分けてきても、身体の正面に来るボールは少ない。今回の試合での数字でいえば、ワイド(サイドライン際)に打たれた確率は53%、センターライン際が41%。そして、ボディ(身体の正面)はわずかに6%。つまり、サーブがどのコースに来るかは、「ほぼ2択」。読みが当たる確率は、その時点で高くなる。

 そして肝心なのは、錦織はリターン時のポジションをこまめに変えることで、相手が打つコースを巧みに誘導していたという点だ。

「けっこう変えていましたね。相手の得意ではないところに、打たせるように動いていたので」

 錦織は試合後に、そう明かす。相手が速いサーブを打つだろうファーストサーブ時、そしてスピンをかけてくるだろうセカンドサーブ時などの状況に応じ、錦織は前後に、そして左右に頻繁に構える位置を変えていく。そして相手が打つよりも早く、サーブが来るコースへと動いている場面が幾度もあった。

 たとえば、第2セットの第5ゲーム。グロスが高速サーブをセンターに叩き込みたいであろう場面で、錦織はコースを消すようにややセンター側にポジションを取ると、相手が打つよりも一瞬先にワイド側へとステップを踏んだ。果たしてサーブは、錦織のラケットに吸い込まれるようにワイドへと飛んでくる。錦織は迷うことなくバックハンドを一閃し、ストレートへと鮮やかなリターンウイナーを放った。

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