全仏初優勝。正しかった、新女王ガルビネ・ムグルサの「選択」 (2ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki  photo by AFLO

 ただ問題は、スペインとベネズエラのどちらを拠点とするかである。子どもたちがテニスに打ち込める環境としては、スペインのほうが望ましい。だが、ベネズエラで会社を経営する父は、母国に帰るわけにもいかなかった。それでも両親は最終的に、子どものよりよい未来を選ぶ。母親とともにムグルサがスペインに渡ったのは、6歳のとき。以降、彼女はテニスプレーヤーとして実力をつけるに伴い、「どちらの国籍を選ぶのだ?」と問われ続けることになる。

 スペインでは、元全仏王者のセルジ・ブルゲラが運営するアカデミーを拠点とした。だが、彼女のプレースタイルは、トップスピンを軸に長い打ち合いを好む、いわゆるスペインの伝統的なテニスとは異なる。長身を生かし、ネットギリギリを超える直線的な高速ボールで打ち合いを支配するのが、ムグルサのテニスである。

 そんな彼女も実は、幼少期はスペイン的なプレーを目指していたという。ただ、今でこそ182cm・73kgの恵まれた体格を持つムグルサだが、子どものころは手足が細長く、スタミナもなかったという。

「スピンをかけるパワーがなかったし、走り回るのも得意じゃなかった」。そこでコーチとも相談したうえ、ベースライン上からカウンター主体で低い球を打つプレーを選び取った。

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