ジョコビッチの生涯グランドスラム達成が「A・マリー戦」である必然 (4ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki  photo by AFLO

 そうして、ふたたび迎えた優勝へのサービスゲームで、ジョコビッチはファンの歓声をあおりながら、闘志を掻き立てた。歴史的な瞬間を築く最後のポイントは、長く、激しい攻防となる――。攻守を入れ替え、両者コートを縦横に走りながら交わされる20本のラリー。ふたりのライバル関係を象徴するような打ち合いは、マリーのバックハンドがネットにかかり、ついに終止符が打たれる。

 それは、3時間4分の決勝戦の終わりであり、4年越しの生涯グランドスラムの悲願成就のときであり、そして1969年のロッド・レーバー以来となるグランドスラム4大会連続優勝が達成された瞬間でもあった。放心したようにコートに大の字に倒れたジョコビッチは、自分を拒み続けた赤土の感触を背中で噛みしめ、大声援を浴びながら、乳白色の曇り空を見つめていた。

 試合後、コート上に素早く組まれた表彰台に上がったマリーは、マイクを手にすると、まずはフランス語ができないことをファンに詫びる。そして、チームスタッフや大会関係者たちに謝意を述べると、「ハロー」とマイクの音声が入っていることを確認してから、ジョコビッチに向き合い言った。

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