これぞ勝率歴代1位。
錦織圭が真価を示した「ファイナルセット」

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki  photo by AFLO

 第1セットは、「なかなか調子が上がらなかった」というベルダスコのセカンドサーブを叩いた錦織が、序盤のブレーク合戦を抜け出し奪取。第2セットは、第5ゲームから第8ゲームにかけ両者ともにサービスがキープできないなか、相手の強打に食らいつく執念を見せた錦織が終盤にゲームキープし、このセットも掴み取った。

 しかし第2セットの中盤から、フォアの強打のインパクト音だけで観客の興奮を誘うベルダスコが、判官贔屓(ほうがんびいき)を好むパリの観客を味方につける。また、強打自慢の男が「試しに使ってみたらすごく感触がよかった。2度目もきれいに決まったので、どんどん使っていこうと思った」というドロップショットを多用し始める。気温32度に達する暑さのなか、疲れの色を見せぬ32歳は、逆襲への闘志をぎらつかせながら第3セットへと入っていった。

「まずは目の前のポイントのことだけを考えた。サーブの調子も、ようやく上がってきた」

 後がなくなったことで開き直った感もあるベルダスコの集中力とともに、パリの気温も上昇する。乾いた土のコートは、ただでさえ弾むベルダスコのトップスピンを、より宙高く跳ね上げた。そのスピンでバックサイドを狙われた錦織は、打ち合いで守勢に回る局面が多くなる。力が入らず浅くなる錦織のバックを、ベルダスコはフォアで叩く。あるいは機を見て、錦織すら「うまかったとしか言いようがない」とお手上げのドロップショットを、ネット際に沈めてくる。第3セットと第4セットでベルダスコがフォアで奪ったウイナーは、いずれも8本。

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