天然ではない。
「まったく覚えてない」錦織圭の思考回路

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki  photo by AFLO

 ならば我々も、次の試合のみに集中しよう。

 2回戦の相手は、世界ランク40位のアンドレイ・クズネツォフ(ロシア)。昨年末、ドイツのアカデミーに身を置き充実のオフシーズンを過ごしたことで、今季は潜在能力が開花した、元ウインブルドン・ジュニア優勝者である。

 そのクズネツォフの台頭に錦織も注目していたのか、「彼の試合は、最近ちょこちょこ見る」のだと言った。

「徐々に強くなっているな、という印象がけっこうあったので。危険な選手なのは間違いないですね。フラットで打ち、バックもダウンザライン(ストレート)にけっこう綺麗に打ってくる」

 難しい試合になりそうな気はしています......そう彼は、気を引き締めた。

 どの選手が勝ち上がっていくかなどは、己の制御下にはない事象。だから彼は、そんなことには頓着(とんちゃく)しない。代わりに、近い将来対戦する可能性のある選手をチェックし、試合を見て、来たる対戦に備え分析する――。

 自身が制御できる事象に対しては、細心の注意と最大限の敬意を払い、錦織圭は、次の一歩を踏み出す。

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