錦織圭とジョコビッチ、2人が語る「勝者と敗者を分けたもの」

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki  photo by AFLO

 絶対王者ノバク・ジョコビッチ(セルビア)の"鉄壁"をこじ開けるためのカギを、彼は1週間前のマドリードでの対戦で、すでにその手に掴んでいた。その試合は3-6、6-7で敗れたものの、拮抗した展開のなかで錦織圭は、高く弾むフォアやドロップショットを操って3次元に組み立てるストローク戦に、たしかな手ごたえを感じていた。

ジョコビッチ(左)にまたも勝利を奪われた錦織圭(右)ジョコビッチ(左)にまたも勝利を奪われた錦織圭(右) そのときに覚えた予感を確信に変える機会は、幸運にも、1週間後に訪れる――。

 先週のマドリードに続きローマでも実現した、マスターズ2大会連続となる「ジョコビッチvs錦織」の準決勝カード。「光は見えている。先週みたいに我慢しながら、チャンスを見てアグレッシブにプレーするのがベスト」。ジョコビッチとの再戦を控え、彼はそう決意を口にしていた。

 予報を覆し晴れ間を見せた、ローマの週末の夜を彩る一戦。それは、数々の小さな逆転劇と感情の起伏、そして予測不能なアクシデントをも織り込んだ、3時間1分の壮大なドラマへと紡がれていく。

 最初の"勝負の綾(あや)"は、思いがけぬ形で訪れた。ジョコビッチは試合開始早々、靴裏にこびりついた赤土を払おうとして、誤ってラケットで自分の足首を叩いてしまったのだ。すぐに治療を施したものの、コートに戻ってきた直後のジョコビッチの動きは、やはりどこかぎこちなかった。

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