錦織圭の父が語る「絶対王者・ジョコビッチ超え」に必要なもの (5ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki   photo by AFLO

 ジョコビッチに敗れた錦織の姿からはいつも、あのときのフェデラーのような当惑がにじみ出る。自分の信じるテニスセオリーが通用しない、その恐怖が錦織を焦らせ、わからなくさせる――。そう感じられてならなかった。

 その迷いを、焦りを、乗り越えるために必要なものとは、何だろうか?

「ここから先に行くには、周りを見る余裕......、人間的な成熟が必要なのかもしれない」と言ったのは、父親の清志さんである。

 あるいは、フェデラーが相手のセカンドサーブをハーフボレーで打ち返してネットにつめる妙技でジョコビッチから3ヶ月の間にふたつの勝利を奪ったように、絶対王者のシステムすら崩す武器を錦織が会得することかもしれない。

 どちらが勝っても歴史が生まれる対戦で、結果生まれた記録は、28回のマスターズ優勝最多優勝であった。

 一方で錦織は、インディアンウェルズとマイアミの双方で、それぞれ自己最高の成績を残した。盤石のストレート勝ちが6試合。第1セットを落としながらの、見る者の心を打つ逆転勝利が2試合。ふたつの大会を通じて、しのいだマッチポイントは計8本――。

 世界1位への挑戦権を持つ選手であることを証明した今、セオリーを超越した王者を倒す、もっとも難解なクエストがここから始まる。


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