マスターズ準決勝。錦織圭は「2年前の忘れ物」を取りに戻る (5ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki   photo by Getty Images

「コートに立つことは、できたかもしれない。でも、"戦うこと"はできなかったと思う」「準決勝で戦えないのは本当に残念。でも、今の状態では(準決勝で対戦する)ジョコビッチに、"勝つチャンスはない"と思った」......と。

 あのときの彼は、全トップ選手が集う『ATPマスターズ1000』の準決勝の舞台で"戦うこと"、つまりは"勝つこと"のみを目指していた。マスターズの準決勝ですら、錦織にとってはすでに、「立つだけでは意味のない場所」であった。だからこそ、次に必ず勝利を掴み取るため、あの日の彼は、あえてコートに背を向けたのだ。

 そのときの忘れ物を取りに戻るため、錦織圭は背筋をすっと伸ばし、2年前に立てなかったセンターコートへと歩みを進める――。


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