マスターズ準決勝。錦織圭は「2年前の忘れ物」を取りに戻る (2ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki   photo by Getty Images

 九死に一生を得ていたったマイアミ・オープン準決勝の舞台は、2年前に達しながらも、股関節の痛みのために試合直前で棄権した、「無念の記憶が眠る場」でもある。

 だからこそ、彼は言う。

「あのときは、とてもがっかりしたのを覚えている。マスターズで初の準決勝だったのに、ケガでプレーできなかった。今の僕は、あのころよりフィジカルが強い。だから、明日は大丈夫。ここまでいいプレーができているし、体力的にも問題ないので、次の試合を楽しみにしている」

 その「楽しみにしている次の試合」で彼が相対(あいたい)するのは、弱冠20歳のニック・キリオス(オーストラリア)。ランキングこそ26位だが、今季はすでにマルセイユ大会で8位のトマーシュ・ベルディヒ(チェコ)や、12位のマリン・チリッチ(クロアチア)を破って優勝しているのだから、ランキングは彼の実力を正しく示してはいない。

 さらに今大会の準決勝進出で、トップ20入りも確定。しかもまだプロ3年目の成長株ながら、トップ10選手を相手に7勝12敗という高勝率を誇っている。今季に限れば、この数字は3勝2敗とさらに上昇。2年前のウインブルドンで当時1位のラファエル・ナダル(スペイン)を破るなど、大舞台に強いのも、この"怖い物知らず"の若者の特徴である。

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