「苦手」なコートで「苦手」なイズナーを撃破した錦織圭の戦略 (5ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki   photo by AFLO

「マッチポイントを握られたこの場面では、一番得意とするセンターにサーブを打ってくるはず」

 相手の心理を見透かした錦織の読みがピタリとハマり、相手の足もと深くに刺さったリターン。2本のラリー交換の後、ラインを割るイズナーのショット......。その瞬間、今まで抑えこんだ激情を解き放つかのように、錦織は握りこぶしを激しく天に突き上げた。

「しっくりこない」と苦手意識を抱いていたこの大会で、ビッグサーバーとの接戦を制した事実は、単なる"ベスト8到達"以上の意味を持つ。

「このコートでは我慢が必要だ」と自分に言い聞かせ、攻めたい本能を制御して掴んだ勝利。そして、デビスカップのマリー戦で手触りを得た、「ゆっくり気味の打ち合い」で相手のミスを誘発するプレー。それら確かな成長の証(あかし)を掲げた拳に握りしめ、錦織圭は準々決勝のラファエル・ナダル戦へと歩みを進める。



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