「苦手」なコートで「苦手」なイズナーを撃破した錦織圭の戦略 (4ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki   photo by AFLO

 これで流れは錦織にあるかと思われた、第3セット。だが、イズナーのサーブの威力は依然衰えず、対する錦織のフォアも安定感を増していく。互いにブレークチャンスも訪れないまま、続いていく並走状態。その均衡が突如揺らぎかけたのが、ゲームカウント5−6での錦織のサービスゲーム。ドロップショットのミスなどもあり、30−40で相手に許したマッチポイント......。

 この絶体絶命の場面で錦織を律したのは、「ここまでうまくいっていたのに、ドロップショットや簡単なミスで負けてしまうのはすごく嫌だ」という究極の負けず嫌い精神と、「焦らず、しっかりスピンをかけてポイントを組み立てよう」と自身に言い聞かせた冷静さ。我慢の打ち合いのなかから、一瞬の機を見て叩き込んだフォアのクロスでマッチポイントを逃れ、勝敗の行方は、ふたたびタイブレークにゆだねられた。

 両者の勝利への執念が激しくせめぎ合い、息詰まる一進一退の攻防が展開されるなか、相手のサーブながらようやく到ったマッチポイント――。

 試合開始から2時間10分。ここまで「リターンに関しては策が尽きて、お手上げ状態」であったにも関わらず、我慢に我慢を重ねてきた錦織に、ついに勝利の女神が微笑みかける。

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