錦織-チャン体制が好例。トップ選手の隣に『レジェンドコーチ』あり (2ページ目)

  • 神仁司●文・写真 text & photo by Ko Hitoshi

 ロジャー・フェデラーが、グランドスラム(以下GS)6回の優勝を誇り、元世界1位のステファン・エドバーグと、ノバク・ジョコビッチが、やはりGS6回優勝で元世界1位のボリス・ベッカーと、マリン・チリッチが、01年ウインブルドン優勝者のゴラン・イバニセビッチとそれぞれタッグを組んだ。"レジェンドコーチ"はちょっとしたブームとなった。

 フェデラーは13年シーズンの不振から抜け出すためにエドバーグに助言を求め、エドバーグはフェデラーがもともと得意とするネットプレーを増やして、攻撃テニスをブラッシュアップさせた。プロデビュー時はサーブ&ボレーを多用していたフェデラーにとっては原点回帰のようなものだったが、この戦略が当たり、フェデラーは世界ランク2位まで再浮上。エドバーグとのコーチ契約は当初1年だったが、15年シーズンも一緒にツアーを回った。

 ジョコビッチは14年1月時点で、すでにGSで6回優勝していたが、大舞台でのメンタルの対処法をベッカーから学ぶことで、さらなる飛躍を望んだ。ベッカーと組んでから現在まで、グランドスラムで5回も優勝し、世界1位を盤石なものにしており、ベッカー効果はてき面に表れている。

 チリッチのコーチになったイバニセビッチは、「自分の現役時代に、レジェンドコーチがいたら、(自分は)もっとGSで優勝できたんじゃないかな」と、この"ブーム"をうらやましがった。そんなイバニセビッチは、クロアチアの後輩であるチリッチを、14年US(全米)オープンでGSチャンピオンに導いてみせた。

 このようにレジェンドコーチたちは、名選手が名コーチになり得ることを示してきたが、そもそも、この流れの発端はアンディ・マリーが、12年1月からGSで8回もの優勝を飾った元世界1位のイワン・レンドルを、ツアーコーチにつけたことだった。

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