錦織圭が今季最終戦で見せた2016年への「希望」と「課題」

  • 神 仁司●文・写真 text & photo by Ko Hitoshi

 錦織は、2016年シーズンを26歳で迎えることになるが、プロテニスプレーヤーのフィジカルが、20代後半で劇的に強くなることを期待するのは現実的ではない。しかし、進化が止まれば、現状さえも維持することが難しくなり、トップレベルと差をつけられてしまう。これまで積み上げて来たフィジカルの強さを維持しつつ、さらにコーチ陣が言う「進化」を遂げることができるかどうかが、錦織にとっては重要だ。

 また、トップ10選手との対戦で、錦織は2014年シーズンに11勝7敗と勝ち越していたが、2015年シーズンには6勝10敗 と負け越した。ここには、ライバル選手による錦織対策が徹底的に行なわれたことが読み取れる。それほど強くない錦織のセカンドサーブをリターンから強打されて先手を打たれたり、錦織の正面、ボディーへのサーブを打たれ、得意のリターンを封じられたりして、勝負どころで、なかなかポイントを奪えなくなる場面が増えた。

 当然、進化しようとしているのは錦織だけではなく、ジョコビッチやフェデラーらも必死だ。ツアーファイナルズで、世界のトップエリート8人が繰り広げる究極の戦いの中で、トップの力を肌で感じられたことは、再浮上を目指す錦織にとって大きな糧になったのではないだろうか。

「自信はついていますし、この(ツアーファイナルズの)3試合、全部簡単にやられていたら話は別ですけど、モヤモヤしていた中、ベルディヒに勝ったり、今日(フェデラー戦)もいいテニスが戻ってきたり、できるという収穫が大きかった。ポジティブにとらえたい」

 依然として世界のトップ5には、強力なライバルたちが居座る。だが、この1週間で錦織自身、彼らを倒してグランドスラムの優勝戦線に加わることのできる力、そして、この舞台に戻って来られる力を秘めていると確認できたはず。2016年シーズンも期待せずにはいられない。


テニス記事の一覧>

4 / 4

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る