負けても「楽しかった」錦織圭。フェデラー戦で得た「最高のご褒美」 (4ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki   photo by Getty Images

 問われた錦織は、気色ばむこともなく、自然に答える。

「今でも、ロジャーには最大級の敬意を払っている。彼はとても美しいテニスをする。彼のプレーを見るのはすごく好きなんだ」

 そんな錦織の言葉を聞きながら、そういえば……と思い出すことがあった。

 錦織の幼なじみに、話を聞いたときのこと。その幼なじみは少年時代の錦織が、テレビでフェデラーの試合を熱心に見ていたことを、あるいは実名の選手が登場するテレビゲームで、フェデラーを操作して遊んでいた姿をよく覚えている。

「だから、『フェデラーが大好き』と言ってコーチに怒られたそうですが、でもわかるなって。テレビで見ていた憧れの人と、自分がやっているんだから。フェデラーは、ゲームで圭くんがよく使っていたキャラだったんですよ。だから僕も、フェデラーのことはよく覚えている。圭くんの試合を見て、思うんですよね。『昔、ゲームで使っていたキャラを、ぶっ倒しているよ』って」

「ゲームで使っていたキャラ」と同じコートに立ち、戦うことは、錦織の胸に少年時代の興奮と感激をよみがえらせ、テニスの原点へと立ち返らせたのだろう。

「やっぱり学ぶことが多いし、彼と対戦することで自分も成長できるのを感じられる。昔、見ていたスーパースターと自分が互角に戦えているというのが、嬉しいし、楽しいです」

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